NFTとはどんな技術なのか?
本記事は、NFT (Non-Fungible Token) について、
その技術的な特徴を、わかりやすく説明することを目的とした記事です。
専門用語を限界まで排除し、NFTの本質だけを端的に解説します。
ハッシュ値という単語すら使わないよ!
・NFTにできること
・NFTにできないこと
・ブロックチェーンの信頼性
・ブロックチェーンと環境負荷
・専門家のための詳しい技術解説
・NFTの売買について
・NFTにまつわる文化
・NFTで儲ける方法(むしろ教えて欲しい)
NFTは「Non Fungible Token」の略称です。日本語では「非代替性トークン」と翻訳されます。
これは、NFTの本質を端的かつ正確に表現している、優れた略称です。
しかし、この単語だけを聞いて、NFTの性質を理解できる人は、あまりいないかもしれません。
多くの人は、NFTについて、なにやら難しくて面倒なものだと思っているかもしれません。
まあ、数学的に正しく理解するのは非常に難しくて面倒なのですが・・・
しかし、
NFTの本質は非常にシンプルです。
NFTにできることは、次のことだけです。
「0x8db1342F」さんが発行した
NFT「0x012317a1」は
現在「0x317012a1」さんが所持していることを、
事実上完全に証明できる
これが、NFTのすべてです。これ以上でもこれ以下でもありません。
おめでとうございます! これでもう、NFTがわからなくて悩むことはなくなりますね!
「0x8db1342F」さんはどこの誰ですか?
WHO 0x8db1342F
・・・・読者さんの「?????」という心の叫びが聞こえてきましたので、もう少し説明いたします。
いきなり、「0x8db1342F」さんという、奇っ怪な名前をもつ人物が登場しました。
「0x8db1342F」さんは一体どこの誰なのですか? という疑問は当然のことだと思います。
結論から言いましょう。どこの誰なのかは、まったくわかりません!
「0x8db1342F」というのは、メールアドレスのようなものです。
「abcdefg@dot.com」というアドレスから、新しいメールを書いて送れるのと同じように、
「0x8db1342F」というアドレスから、新しいNFTを発行している、ということになります。
メールアドレスだけでは、現実世界の、どこの誰なのかは、まったくわかりません。
NFTのアドレスも同じです。「0x8db1342F」が誰なのかは、まったくわかりません。
そして、
「0x8db1342F」が、どこの誰なのかまったくわからないということは、
「0x8db1342F」さんが発行した、NFT「0x012317a1」は、
そこら辺にある落書きと大差ないモノということでもあります。
だって、誰が描いたのかわからない落書きなんて、なんの価値もありませんよね?
同じように、誰が発行したのかわからないNFTなんて、なんの価値もありませんよね?
NFTとは、どこの誰が発行したのかわからない証明書です。
NFT「0x012317a1」を「0x8db1342F」さんが発行したことは証明されるのですが、
それ以外のことは、なにも証明されません。
前節で説明したように、NFTとは、どこの誰が発行したのかわからない証明書です。
骨董品に、どこの誰が書いたのかわからない鑑定書がついてくるのと同じです。
どこの誰が書いたのかわからない鑑定書には、なんの価値もありません。
著名な鑑定人や、権威ある組織による鑑定書でなくては、意味がないのです。
逆に言えば、「0x8db1342F」さんが、
著名人だったり、権威ある組織であることがはっきりしているのなら、
「0x8db1342F」さんが発行したNFTは、著名人による保証付きの証明書になります。
しかし、「0x8db1342F」さんが、どこの誰なのかは、
NFTだけでは証明できません。
現実世界の情報を組み合わせて、証明する必要があります。
たとえば、ある有名漫画家さんが、「0x8db1342F」というアドレスを使用して、
代表作である「後退の小人」の書き下ろし画像つきNFTを発行すると、
自身のSNSアカウントで発表し、その通りにNFTが発行されたとしましょう。
このとき、認証マークがついている、出版社の公式サイトからもリンクされている、などによって、
そのSNSアカウントが「後退の小人」の作者本人のアカウントであることが確実であるならば、
「0x8db1342F」さんが「後退の小人」の作者であることも、確実です。
したがって、「0x8db1342F」さんが発行した、NFT「0x012317a1」は、
「後退の小人」の作者本人が発行した、書き下ろし画像つきのNFTであることは、間違いありません。
つまり、「0x8db1342F」さんが発行した、NFT「0x012317a1」は、
「作者本人による書き下ろし画像」に
「作者本人による証明書」がついているということです。
これにより、NFT「0x012317a1」は「後退の小人」の作者本人による発行であることが保証されるため、
「作者本人による書き下ろしイラストつきのサイン入り色紙」と同等の価値がある、
と考えることができます。
このように、NFTだけでは、NFT内の情報しか、証明することができません。
そこに価値や意味を見出すためには、必ず現実世界の情報と、関連付ける必要があります。
「作者本人による書き下ろしイラストつきのサイン入り色紙と同等の価値」とは、
どれくらいの価値なのか? と疑問に思われるかもしれません。
これについては、
「作者本人による書き下ろしイラストつきのサイン入り色紙」と同等の価値がある、
としか答えようがありません。
物理的なサイン入り色紙でも、誰がなにを描いたのかにより、価値が異なります。
筆者が描いたサイン入り色紙であれば、ただのゴミであり、1円の価値もないでしょう。
しかし、ゴッホのサインであれば、数千万円~数億円で取引されることもありえます。
NFTは、あくまでも、発行者(と所有者)を証明してくれる技術でしかありません。
それにどれくらいの価値を見出すのかは、人それぞれとなります。
前節までで、NFTは発行者のNFTアドレスを証明してくれることと、
そのNFTアドレスがどこの誰なのかは、NFT以外のところで証明するしかないことを、説明しました。
しかし、NFTが証明してくれるのは、発行者のNFTアドレスだけではありません。
所有者のNFTアドレスも証明してくれます。
この機能があることで、NFTは、単なる証明書の枠を超えて、
取引できる証明書になっています。
あなたが使用しているNFTアドレスが「0x317012a1」であると仮定し、
「0x317012a1」さん(あなた)は、いくらかの対価を支払って、
「0x8db1342F」さん(「後退の小人」の作者)が発行した、NFT「0x012317a1」を購入したとしましょう。
このときに、NFT「0x012317a1」に対して、以下のシンプルな変更が行われます。
「0x8db1342F」さんが発行した
NFT「0x012317a1」の
所有者履歴の最後に「0x317012a1」さんを追加する
たったこれだけです。NFTの取引とは、これがすべてです。
このときに、あなたは、現実世界で「対価の支払い」を行っていますが、
現実世界での対価の支払いと、NFTの取引には、直接的には、なんの関係もありません。
クレジットカードだろうが、暗号資産だろうが、現金だろうが、
宝石との交換であろうが、無償で譲渡されたのであろうが、NFT的には、関係ありません。
NFT「0x012317a1」の発行者であり、現在の所有者である「0x8db1342F」さんが、
NFT「0x012317a1」の、所有者履歴の最後に「0x317012a1」さんを追加した、それだけです。
NFTは、所有者が変わったことだけを証明してくれます。
まあ、暗号資産の場合には、支払いとNFTを関連付けることもできますが・・・
これによって「0x317012a1」さんは、
「0x8db1342F」さんが発行した、NFT「0x012317a1」の、最終所有者であることを、証明できます。
そして、NFTによる
証明は事実上完全です。
ハッキングされる心配も、偽物が出てくる心配も、まったくありません。
あなたがNFT「0x012317a1」の最終所有者であることは、
そのNFTのネットワークが存続している限り、未来永劫に渡って証明されます。
なぜNFT(ブロックチェーン)の証明は事実上完全なのか?
については次節で説明いたします。
「ハッキングされる心配がない」と書きましたが、
これはあくまでも、NFTネットワークそのものがハッキングされる心配はない、という意味です。
さらに言えば「十分に大規模なブロックチェーンネットワークならば」もつきますが
あなたが、アドレス「0x317012a1」にアクセスするためのパスワードを漏らしてしまった!
という重大なうっかりをやらかしてしまうと、当然ハッキングされます。
そして、NFT(や暗号資産)では、しばしば複雑な操作が要求されるため、
うっかりミスが発生しやすいという実態があります。
さて、「0x317012a1」さん(あなた)は、晴れてNFT「0x012317a1」の最終所有者になりました。
このNFTを、「0x4260020」さんが、あなたが購入した価格より、高い金額で買いたいと申し出てきました。
「0x4260020」さんの提示する金額にあなたが納得したのであれば、取引は成立です。
あなたは「0x4260020」さんから何らかの手段で提示金額を受け取り、
NFT「0x012317a1」の所有者履歴の最後に「0x4260020」さんを追加します。
これで、あなたは差額分の金額を儲けたことになります。おめでとうございます!
このときも、現実世界でのお金のやり取りがどうであれ、NFTにはシンプルな変更が行われます。
「0x8db1342F」さんが発行した
NFT「0x012317a1」の
所有者履歴の最後に「0x4260020」さんを追加する
ポイントは「所有者履歴の最後」です。
NFT(ブロックチェーン)では、所有者が変更されるたびに、新しい所有者のアドレスを追加します。
つまり、この時点で、NFT「0x012317a1」には、次の所有者履歴が記録されています。
「0x8db1342F」 > 「0x317012a1」 > 「0x4260020」
NFTの発行者は、NFTの最初の所有者でもあります。
NFTの発行者である「0x8db1342F」さん(「後退の小人」の作者)が、最初の所有者として記録されており、
その後ろに、それ以降の所有者が、まるで
鎖のように、延々と追加されます。
最後の所有者が、現在の所有者です。
法律上の所有の概念とは異なるのですが、わかりやすさのために所有と表現しています
つまり、NFT「0x012317a1」が、この後どれだけ取引を重ねようとも、
NFTの発行者が「0x8db1342F」さん(「後退の小人」の作者)であることは記録されたままであり、
「0x8db1342F」さんが発行したNFTであることを、証明しつづけることができます。
NFTが、ブロックチェーン技術を使っていることは、聞いたことがあると思います。
実は、ブロックチェーンの、チェーン(鎖)とは、まさに上記のことを指しています。
最初の取引から、最後の取引まで、すべての取引履歴が
鎖のようにつながって記録されていることから
ブロックチェーンという名前がつけられているのです。
何故ブロックチェーンの証明は事実上完全なのか?
BLOCKCHAIN
ここまでの説明で、NFTとは、
取引履歴を記録するだけのもの、であることは、
なんとなく理解していただけたのかなと思います。
ぶっちゃけ、NFT(ブロックチェーン)とは、単なる取引台帳にすぎません。
しかし、それがわかると、新しい疑問が出てくることでしょう。
取引履歴を記録するだけって・・・
それってすごいことなの?
そんなの簡単じゃん。大げさに騒ぐような技術じゃないでしょ? と思われるのは当然です。
実際、その通りです。取引履歴を記録するだけなら、とても簡単です。
なんなら、エクセルに所有者アドレスを並べるだけで完成します。
下記は、エクセルで作った、取引台帳のイメージです。
もしも、信頼できる内輪の間での取引であれば、これでも十分に機能します。
しかし、不特定多数の人々との取引では、これでは十分ではありません。
どこかの誰かが、取引台帳をかってに書き換えてしまうかもしれないからです。
取引台帳が、事実上完全に信用できるものでなければ、
信頼できない人々との取引は成り立ちません。
実は、この問題に対する解決策は、2つ存在しています。
1つは・・・
十分に信頼できる組織が、取引台帳を運営すること。
もう1つは・・・
世界中で、取引台帳を共有することです。
まずは、「十分に信頼できる組織が取引台帳を運営する」場合について、説明しましょう。
これは、非常に一般的な手段であり、ネット上のほとんどの取引は、この方法で行われています。
たとえば、筆者が、
電子書籍販売会社である
粗林社から、
話題のマンガ本である
純天住宅3巻を買ったとしましょう。
このとき、「筆者が純天住宅3巻を買った」という情報は、
粗林社のサーバー上の取引台帳に記録されます。
したがって、「筆者が純天住宅3巻を買った」ことを証明してくれるのは、粗林社だけです。
粗林社以外の組織は、そのことを知りませんし、証明することもできません。
したがって、粗林社が操作ミスでサーバーを破壊してしまったり、
外部からのハッキングによって、取引台帳の一部が消されてしまったり、
粗林社がワザと筆者の購入履歴をサーバーから削除してしまうようなことが起きた場合、
「筆者が純天住宅3巻を買った」ことは、この世の誰にも証明できなくなってしまいます。
つまり、粗林社は十分に信頼できる大企業なので、そのようなことはおこらないだろうという、
特定の組織に対する信用のみで、取引がなりたっているのです。
普通の取引であれば、これで十分です。
しかし、この方式では、すべての取引は、粗林社の管理の元で行われることになります。
人々が、自由な方法で、自由なモノを、自由に取引したくても、それはできません。
そこで、NFT(ブロックチェーン)では、
自由な取引と、取引台帳の信頼性を両立するために、後者の方式を採用しています。
つまり、
NFTの取引台帳は、世界中の、異なる組織の間で、共有されているのです。
ブロックチェーンでは、世界中の異なる組織が、それぞれサーバーを立てて、取引台帳を運営しています。
新しい取引は、世界中のサーバーに送信され、世界中のサーバーに、同じように記録されます。
世界中に数万台あるサーバーが、まったく同じ内容の取引台帳を、まったく同じように管理しています。
もちろん、それだとムダが多いので、実際にはもうちょっと効率よくやっていますが
したがって、1つのサーバーの取引台帳が、ハッキングによって書き換えられたとしても、
数万台ある他のサーバーの取引台帳と比較すれば、ハッキングされていることを確実に見抜けます。
ハッキングによって、取引履歴を改ざんするためには、
世界中の
数万台のサーバーの半分以上を、同時にハッキングしなくてはなりません。
そんなことは、天才ハッカーを何人も抱えているようなハッキング集団であっても、不可能です。
わかりやすさのためにハッキングと書いてます。クラッキング派の方も、ご理解いただければと思います。
一言で言えば、NFT(ブロックチェーン)とは、
常に数万台のバックアップがある取引台帳です。
常に数万台のバックアップがあるので、一部のサーバーが壊れても、まったく問題ありません。
世界中の数万台のサーバーが、同時にハッキングされる、同時に故障する、同時にバグる、
ということは現実的に考えがたく、膨大なバックアップがあることで、信頼性が保たれています。
しかも、その数万台のバックアップは、
異なる組織が管理しています。
したがって、1つの組織の管理者が暴走して、取引履歴を書き換えたとしても、
数万台ある他のサーバーの取引台帳と比較すれば、すぐにバレてしまいます。
もし、サーバーの管理者を賄賂で買収して、取引履歴を書き換えようと考えたとしても、
世界中に存在する数万人の管理者を同時に買収しなくては、成功しません。
もちろん、そんなことは現実的に不可能です。
そして、取引台帳が世界中で共有されているので、特定のひとつの組織に依存していません。
正しい手続きを踏めば、誰でも取引に参加でき、自由に取引を行うことができます。
そして、その
正しい手続きは、数学的に保証されています。
数学的に正しい手続きでしか、取引はできません。計算が間違っているものは、不正な取引です。
どんな
権力者であっても、数学には逆らえません。数学的に正しい手続きでしか、取引できないのです。
数学的に保証ってホント?って思う人は、ハッシュ値でググってみてね!
このような仕組みによって、NFT(ブロックチェーン)は、
取引台帳の高い信頼性と、不特定多数の人々の自由な取引を、完全に両立することに成功しています。
特定の巨大組織にしばられることなく、不特定多数の人々が、自由に取引できるのです!
このように、ブロックチェーンの信頼性は、ハッキングが困難すぎることで成り立っています。
理論上は、莫大な資金と膨大な手間をかければ、ハッキングは不可能ではないのですが、
実際にそれをやると、確実に大赤字です。したがって、どこもやりません。
このように、ブロックチェーンのハッキングの困難さは、規模の大きさに依存しています。
逆に言えば、規模の小さいブロックチェーンの場合は、比較的ハッキングしやすい
ということでもあります。
ブロックチェーンにはさまざまな種類があり、十分に大規模なものばかりではありません。
ブロックチェーンであれば、なんでも信頼できるわけではありません。
ここまでの説明で、NFTとは、
単なる取引台帳にすぎないが、
ブロックチェーン技術により、信頼性が高く、誰でも使える取引台帳であることは、
なんとなく理解していただけたのかなと思います。
ところで、NFTについては「複製不可能」「非代替性」という説明がよく聞かれます。
ただの取引台帳でしかないNFTが「複製不可能」「非代替性」というのは、どういう意味なのでしょうか?
これも、実のところ、非常にシンプルです。
最初に説明したように、NFTのすべては、以下で説明できます。
「0x8db1342F」さんが発行した
NFT「0x012317a1」は
現在「0x317012a1」さんが所持していることを、
事実上完全に証明できる
ここで重要なのは、NFT「0x012317a1」という部分です。
これはNFTのアドレス(NFT ID)であり、すべてのNFTは、これによって区別できます。
NFT「0x012317a1」は、この世に1つしか存在していません。
「0x8db1342F」さんは、発行したければ、好きなだけNFTを発行できます。
そして、新しく発行したNFTには、すべて別々のNFTのアドレス(NFT ID)がつきます。
NFT「0x0731a112」、 NFT「0x31a812db」、 NFT「0x931c81ab」、 NFT「0x1ea812f8」
NFT「0x0a112731」、 NFT「0xc1ab812f」、 NFT「0x1a112ab1」、 NFT「0x313181f8」
NFT「0x812db731」、 NFT「0x931c8198」、 NFT「0xea881ab0」、 NFT「0x2d1eaa32」
. ・
. ・
. ・
このとき、NFT「0x012317a1」とNFT「0x0731a112」には、まったく同じ画像がついているとしましょう。
それでも、
NFT「0x012317a1」とNFT「0x0731a112」は、異なるNFTです。
NFTは、あくまでも、NFTのアドレス(NFT ID)で区別されます。
NFTには、画像や、動画や、音声や、その他いろんなデータをくっつけることができますし、
まったく同じ画像がくっついているNFTがたくさんつくられることもよくあります。
しかし、
まったく同じ画像がくっついていても、NFTのアドレスが別であれば、それは異なるNFTです。
これは、NFT「0x0731a112」は決して、NFT「0x012317a1」の代替ができないということです。
例え、NFTの中身(くっついている画像)がまったく同じであったとしてもです。
NFT「0x012317a1」は、どこまでいっても、NFT「0x012317a1」なのです。
あるNFTを、他のNFTで代替することはできません。すなわち、
非代替性が実現されているのです。
これは、現実世界において、同じ図柄のカードでも、物理的には1枚1枚別物であることと同じです。
1枚1枚が別物であるという、現実世界の特徴を、デジタルで再現したのが、NFTなのです。
実は、NFTをコピー(複製)することそのものは、可能です。
NFT「0x012317a1」をコピーして、NFT「0x012317a1」を作り、取引台帳に追加することは簡単です。
下記は、NFT「0x012317a1」をコピーして、NFT「0x012317a1」を作ってみた、取引台帳です。
しかし、これでは、同じアドレスのNFTが2つあることが、すぐにわかってしまいます。
したがって、どちらか片方が、コピーされたNFTであることは、すぐにバレてしまいます。
そして、前節で説明したように、NFT(ブロックチェーン)には、常に数万台のバックアップがあります。
他の数万台のバックアップと比較すれば、そのNFTがコピーであることも、すぐにバレてしまいます。
コピーされたNFTは、誰も取引してくれません。なにもできない、無価値なNFTです。
NFTをコピーしても、それは自己満足にしかならないのです。
また、これとは別に、NFTにくっついている画像を取り出して、画像だけコピーすることも、できます。
できますが、これは完全に、単なる画像ファイルにすぎません。
単なる画像であり、NFTではありませんので、そもそも取引のしようがありません。
NFTの画像だけをコピーしても、それは自己満足にしかならないのです。
まあ、画像をながめるだけで満足であれば、それでもいいかもしれませんが・・・
さらに、NFTから画像だけを取り出して、新しいNFTにくっつけて、発行することも、可能です。
例えば「0x0987c53a0」さんが、
「0x8db1342F」さんが発行した、NFT「0x012317a1」から、「後退の小人」の画像だけを取り出して、
新しく発行したNFT「0x8eab81a0」に、その画像をくっつけたとしましょう。
これは、
NFTとしては、正しいNFTです。
なんの問題もなく、NFTの取引台帳に追加できますし、取引することもできます。
できますが・・・
発行者が異なるので、おそらく、1円の価値もつかないでしょう。
NFT「0x8eab81a0」の発行者は、「0x0987c53a0」さんです。
前節までで説明したように、このことはNFTによって事実上完全に証明されます。
ところで・・・「0x0987c53a0」さんは、現実世界における、どこの誰なのでしょうか?
どこの誰かわからない「0x0987c53a0」さんに、「後退の小人」の画像を売る権利があるとは、思えません。
したがって、NFT「0x8eab81a0」が、他のNFTのコピー品であることは、すぐにバレてしまいます。
「有名漫画家のイラストつきサイン入り色紙を勝手にコピーして作ったサイン入り色紙」と同じです。
そんなものに、高い価値がつくことは、考えられないでしょう。
このように、NFTをコピーしてNFTを作ることは可能であっても、
発行者のアドレスが完全に証明されるため、
コピーなのか、オリジナルなのか、判別できるのが、NFTの最大の強みです。
しかし、NFTそのものは、あくまでも
ただの取引台帳でしかありません。
結局のところ、NFTとは、これだけのデータなのです。
「0x012317a1」 の取引履歴は 「0x8db1342F」 > 「0x317012a1」 > 「0x4260020」
「0x04237a11」 の取引履歴は 「0x171db82F」 > 「0x31060020」 > 「0x4312a12」
「0x033b1412」 の取引履歴は 「0xF178da2a」 > 「0x21317011」 > 「0x0410226」
. ・
. ・
. ・
NFTの発行者の情報は、取引台帳に完全に記録されるため、発行者を偽装することは、できません。
発行者が大ポカをやらかして発行者のアドレスがハッキングされない限りは・・・
しかし、画像など、NFTの中身だけをコピーしたNFTを作ることは、難しくありません。
そして、あるNFTが、オリジナルのNFTなのか、コピー品なのかは、NFTだけでは、判別できません。
NFTの外側で、現実世界の現実の情報によって判別するしかありません。
NFT「0x8eab81a0」に「後退の小人」の画像がついていたとしても、
それが「後退の小人の作者本人」や「後退の小人の出版社」によって発行されたNFTなのか、
NFTだけでは、判別できないのです。
NFTだけでわかることは、発行者が「0x0987c53a0」さんであることだけなのです。
したがって、
作者本人のSNSアカウントを確認する、
出版社の公式サイトを確認する、
信頼できるニュースサイトで紹介されていることを確認する、
書店に並んでいる書籍に明記されていることを確認する、
信頼できる会社による信頼できるサイトで販売されている、
大規模なコミュニティによって運営されている、
など、現実世界の情報を参考にして、確認するしかありません。
NFTは、NFTだけでは、完結しないのです。
前節までで、NFTの技術的な性質については、説明しきりました。
しかし、NFT(ブロックチェーン)について語るときには、外せない要素が、1つ残されています。
それは、環境負荷の高さです。
ブロックチェーンは、環境負荷が非常に高いと言われています。
これは、前々節の内容を思いだしていただければ、すぐに理解できます。
ブロックチェーンでは、常に数万台のサーバーを、異なる組織が管理しています。
そして、その数万台のサーバーに記録されている内容は、基本的にまったく同じです。
つまり・・・本来なら、1組織が1台のサーバーで管理できる内容を、わざわざ数万台で管理しているのです。
「サーバーの台数」というのは非常にあやふやな概念なのですが、ここではわかりやすさのために台数で説明します
もうおわかりですね?
つまり、 本来なら、1台のサーバーで管理できる内容を、数万台で管理しているということは、
数万倍の電気をムダに使っているということなのです。
しかし、実際には数万倍どころか、それ以上のムダがあるのかもしれません。
ブロックチェーンは、異なる組織が管理するサーバー同士で、取引履歴をやり取りするために、
極めて複雑な計算を行って、取引が正しいかどうか、検証しています。
これは、1組織が1台のサーバーで管理するのであれば、まるで不要な計算です。
高い信頼性と自由な取引の代償として、莫大な電気を消費しているのが、ブロックチェーンです。
ブロックチェーンは年々改良を続けており、以前よりも環境負荷は少なくなっていますが、
常に数万台のバックアップがあることで信頼性が保たれるという本質は変わりません。
もしも、世界人口78億人が、毎日ブロックチェーンで取引する、というような時代が来た場合には、
ブロックチェーンネットワークを運営する電気だけで、地球資源は枯渇してしまうかもしれません。
したがって、何でもかんでもNFT(ブロックチェーン)を使えばいい、ということにはなりません。
ブロックチェーンで管理すれば、さまざまな取引で、高い信頼性を実現できるのですが、
そのために、膨大な数のサーバーと、莫大な電気を使用してまで、やるメリットがあるのか?
ということが常に課題になります。